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レバノン

Category : 徒然映画
レバノン

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レバノン戦争、第一日目の惨状。

その年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したサミュエル・マオズ監督の作品です。

イスラエルのアリ・フォルマン監督が実体験を基に製作した「戦場でワルツを」とは異なる視点で描いたレバノン戦争ですが、サミュエル・マオズ監督もフォルマン監督と同じように一兵士としての実体験を基にこの作品を製作しています。

この作品の恐るべき点は、「戦車内の密室劇」として、搭乗する4人の兵士たちの心が蝕まれていく様子をリアルに描いていることでしょう。

極小の戦車内でほとんど身動きが取れない状況の中、全編のストーリーが展開していきます。

搭乗する4人の兵士は、

指揮官のアシ
砲撃手のシムリック
砲弾を込めるヘルツル
操縦士のイーガル

彼らの目、手、息遣いがズームアップされ、狭い戦車内に立ち込める緊張感と不安感を漂わせています。

頑丈なつくりの戦車内いるため、外にいる兵士たちより安心なのかと思いきや、標的にされやすいというデメリットもあり、その恐怖感は尋常ならざるものなのでしょう。

さらに、この作品の注目すべき点は、外の情報をすべて砲撃手が覗き込む照準スコープから描いていることです。

これにより、観ている私たちも常に彼ら同じ情報を共有することになり、彼らと同じ恐怖を味わうことになるのです。

今回の彼らの任務は、空軍が攻撃した街にいる残党を一掃すること。

照準スコープから見える街は、目を覆いたくなるほどの惨状です。

遭遇する残党のシリア人兵士たちによって人質にされてしまう1組の家族・・・戦争とは何と無情なのでしょう。

「誰も殺したくはない。」という思いを戦争がかき消しているかのようでした。

外にいる兵士たちは、戦争を肌で感じ、非情な態度をとることは、自分自身の身を守るためであり、それなりの「覚悟」ができているからなのかもしれません。

しかし、戦車で守られている4人の兵士たちは、外にいる兵士たちほどの「覚悟」を決めていませんでした。

外で指揮する総指揮官のジャミルとの温度差が序盤から中盤にかけて印象に残ります。

その「覚悟」の無さが、

アシの指揮官としての判断を鈍らせ、
シムリックの砲撃手としての手を止めさせ、
ヘルツルに反抗的な態度をとらせ、
イーガルに家族への想いを募らせてしまったのでしょう。

でも、これが普通なのかもしれないと思いました。彼らだって普通の一般市民なのだから。私だって同じ境遇にいたら、おそらく彼らと同じような「ダメ兵士」でしょうね。

今回の任務は簡単だとジャミルから告げられていた4人でしたが、なぜかジャミルを含めた小隊はシリア人兵士の領域に侵入していたのです。

そして、事態は急変します。

シリア人兵士から砲撃を受ける戦車。
捕えたシリア人兵士と謎のファランヘ兵士。

さらに、緊張感が高まります。

不甲斐ない4人の兵士たちに喝を入れるジャミル。

しかし、「何か」を隠していると気付くヘルツルは規律を無視してジャミルの通信を傍受するのですが・・・。

はたして4人は無事脱出することができるのか。

アシ役のイタイ・タイラン
シムリック役のヨアフ・ドナ
ヘルツル役のオシュリ・コーエン
イーガル役のマイケル・モショノフ
ジャミル役のゾハー・ストラウス

彼らの迫真の演技にも注目です。

作品のテーマとしては、キャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」と似ているかもしれませんが、この作品を観ると、やっぱりあちらは「アメリカ映画」だなぁと思えてきます。良くも悪くも兵士を英雄視するところとかね。

この作品の主人公たちは、心が病んでも決して再び戦場など行くつもりはないだろうなぁと思います。その点が、「普通の一般市民が兵士となり戦争を体験する」という意味で、「ハート・ロッカー」より登場人物に感情移入しやすく共感が持てました。

ただ、残念な点としては、音響と撮影技術が今一つだったかなぁ。

照準スコープからの映像は、あんなに平面な感じなのでしょうか?あれほどクリアに見えるのでしょうか?実物を見たことがないので推測で語るしかないのですが、イメージとしては玄関ドアにあるドアスコープのような印象なのですが・・・。

あと、戦車からの砲撃シーンの音響がもっと迫力があってもよかったかなぁ。

撮影とは音響は「ハート・ロッカー」の圧勝ですね。でも、この作品が監督初作品というサミュエル・マオズ監督ですから、もしかしたら製作費がなかったのかも。しかし、初作品でこれほどの作品が製作できるとは・・・次回作が楽しみです。

ラスト。

人はみな、好きで戦っているわけではない。兵士だって1人の普通の人間であることを4人の兵士だけでなく、クライマックス直前では総指揮官のジャミルからも感じ取ることができます。

しかし、それはさらなる「覚悟」を決めた証でもありました・・・。

そして、4人の「覚悟」も伝わり、ラストまで息を呑む緊迫したシーンの連続・・・見応えアリです。

この作品の全編の要所要所で聞こえる「あの音」・・・。

ラストシーンでも聞こえるのですが、この音が「生きている証」であり、狭い戦車内の一時の休息、安堵感を与えているようでしたね。

その反面、命の象徴であるかのように高くそびえる向日葵が下を向き寂しげに見えました。


★★★★★★★★★


Title:
LEBANON

Country:
Israel/France/Lebanon/Germany (2009)

Cast:
(Assi)ITAY TIRAN
(Shmulik)YOAV DONAT
(Hertzel)OSHRI COHEN
(Yigal)MICHAEL MOSHONOV
(Gamil)ZOHAR SHTRAUSS

Director:
SAMUEL MAOZ

Awards:
Venice Film Festival 2009
(Golden Lion)SAMUEL MAOZ
(Nazareno Taddei Award)SAMUEL MAOZ
(SIGNIS Award - Honorable Mention)SAMUEL MAOZ


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