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フラミンゴに魅せられた男とその男を愛する女。
イランのハミド・レザ・アリゴリアン監督の初作品です。第23回東京国際映画祭コンペティションに出品しています。
海と高山に挟まれた人の寄り付かない山間部の貧しい村。その村に暮らす男たちは、よその町から追放された犯罪者たち・・・この村は「流刑地」でした。
年に一度、町から役人が来て流刑者たちを点呼します。
その中の一人、ソレイマンは村一番の狩人。村の男たちからも信頼されています。
しかし、彼に関して1つだけ気がかりなことがありました。
法律で禁じられているフラミンゴを狩ること。
フラミンゴ猟は重罪に等しいものでした。
ソレイマンが狙うのは1羽のフラミンゴ。その1羽は、他のフラミンゴが水辺にいるのに、なぜか森に生息しています。
そして、足には「No.13」のリングが・・・。
「翼がなければ鳥も人と同じ。」まで言い切るソレイマン・・・彼はフラミンゴの夢を見るようにまでなってしまいます。
村に住む美しい未亡人タマイは、ことある度に流刑者パラボゴリから愛の告白を受けるのですが、頑なに断り続けます。
タマイはソレイマンを愛していたのです。
そのことを知るパラボゴリは、ソレイマンに憎しみにも似た嫉妬を抱き始めるのですが・・・。
この作品はソレイマンが主人公かと思いきや、彼を愛するタマイが主人公のようでしたね。タマイのソレイマンへの永遠の愛がテーマになっています。
それにしても、神秘的なロケーションでしたね。
寓話的なストーリー、イランの民族舞踊と音楽、そして、随所で語られる詩が、雲を下に臨む天空の村、波が打ち寄せない静かなカスピ海と相まって作品の世界観をより幻想的にしています。
流刑者たちが屯す場所で「プクプク」を音を鳴らせる水タバコもイランならではですね。
アリゴリアン監督の話によると、作品の舞台となる「流刑地」のような村は、10年ほど前までは実在していたそうです。今回、この作品を撮影するにあたって、イメージと合う村を探すにことに大変苦労されたそうです。イメージはストーリーだけでなく「詩」に合うロケーションを探したり、また、見つけたロケーションから「詩」を創ったりと、「詩」が大きなポイントにもなっています。
「詩」を語るのは「先生」と皆から呼ばれる流刑者の老いた男。この老人は町から来る役人からも「先生」と尊敬されるほどの人物で、ソレイマンのフラミンゴへの異常なほどの執着を誰よりも早く見抜いていたのですが・・・どうすることもできなかったのでしょうね。
フラミンゴにはめられた「No.13」のリング・・・「No.13」はイランでも不吉な数字を表すそうです。
女性たちはなぜあの村に居続けているのでしょうね。タマイはソレイマンが「流刑者」と知りながら、愛するようになったのでしょうか?あの村では罪状なんて関係ないのかなぁ。「流刑者」たちも、結構、自由な暮らしのように見えましたね。流刑罪を科せられた者の苦痛のようなものは感じられませんでした。
タマイの想いはソレイマンに通じ、2人は相思相愛となり結婚します。
もちろん、気にいらないのはパラボゴリ・・・。
ソレイマンは結婚してからも、フラミンゴに魅せられていました。時には3日間も猟へ出て行ったきり戻らないことも・・・。心配するタマイ・・・。
そして、悲劇が訪れます・・・。
ソレイマン、タマイ、パラボゴリのそれぞれの願いは叶うのか・・・。
ソレイマン役にはラスール・ユーナン。この作品の脚本も手掛けています。
タマイ役にはバラン・ザマニ。一途な愛を貫く芯のある力強い女性を熱演しています。
2人はアリゴリアン監督とともに東京国際映画祭に参加。作品を観終わった後、客席から登場しました。一緒に観ていたのね^^
チャドルを纏いながら登場したバラン・ザマニ・・・美しかったです。
ラスト。
アリゴリアン監督は言います。
「人生、希望を捨ててはいけない。」
タマイのソレイマンへの愛は希望となり、それを糧としてこれからも強く生きていくのでしょうね。
ラストシーンでタマイが見つめる先にはフラミンゴではなくソレイマンがいるかのよう・・・フラミンゴは不幸をもたらすのではなく幸せを運ぶ鳥なのかもしれませんね。
★★★★★★★★★☆Title:
FLAMINGO NO.13
Country:
Iran (2010)
Cast:
(Solaiman)RASOUL YOUNAN
(Tamay)BARAN ZAMANI
(Professor)MOHAMMAD TAGHI SHAMS LANGROUDI
Director:
HAMID REZA ALIGHOLIAN

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