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戦場でワルツを

Category : 徒然映画
戦場でワルツを

Comment:
レバノン内戦の記憶をなくした元兵士の映画監督が自らの記憶を探るドキュメンタリー・アニメーション。

その年のカンヌ国際映画祭での初上映を皮切りに世界的に高評価を得たイスラエルのアリ・フォルマン監督による長編ドキュメンタリー・アニメーションです。

フォルマン監督自身が主人公となり、彼がなくしたレバノン内戦の記憶を旧友、戦友たちから、その断片を思い出していくストーリーになっています。斬新な切り口、演出、そして、衝撃的な事実と内戦の惨状が克明に記されています。

1975年に勃発し、以降、長期化したレバノン内戦。前回レビューした「ベルセポリス」でのイラン革命およびイラン・イラク戦争と同じく宗教が深く絡んだ戦争になるのですが、本来、人を救うはずの宗教がどうして多くの人間を殺し、遺恨を残し、さらなる対立を生み出すのでしょうね。

宗教を国の政治に組み込んでしまったことが原因なのでしょうか。お互いが違う神を信じることで、信じれば信じるほど、他の神を信じる者を軽んじてみてしまうのでしょうか。だとしたら、政治に宗教を介入させることや宗教を商業にしてしまうことに疑問を抱いてします。

この作品では1982年に起きた「サブラ・シャティーラの虐殺」に焦点を絞っています。

フォルマン監督は2年前からPTSDを発症した戦友ボアズの話を聞いた後、自身も突如フラッシュバックを経験します。海から浮き上がり、全裸で岸まで歩くフォルマン監督。隣には旧友のカルミ・クナアンと見知らぬ男が同じく全裸で歩いています。岸に上がり服を着て街へ歩き出すと・・・そこは西ベイルートの町・・・サブラ・シャティーラの虐殺現場でした。

20数年も経って発症したPTSD・・・この不思議な夢を見たフォルマン監督は、当時の記憶が失われていることに気付き、記憶を取り戻すため、そして、真実を知るために調査を始めるのですが・・・。

この作品はアニメーションにしたことで、さまざまな効果を得ていますね。

まず、フラッシュバックのシーンが表現しやすくなっていること。

オープニングでのボアズのフラッシュバックなどはその良い例ですね。あの猛犬の動きや表情はアニメーションだからこそ出せる威圧感です。また、フォルマン監督のフラッシュバックでの西ベイルートの町や人を実際に撮影することは難しいだろうし、カルミのフラッシュバックもアニメーションだから描けたのかも知れません。それに実写だと相当な高コストでしょうしね^^

また、カルミのように取材は許可しても撮影までは許可しない人に対する配慮もアニメーションによって可能にしていますね。カルミの声は声優を立てています。

さらに、ここを見て欲しいというところだけを動かしている点にも注目ですね。特にインタビュー中の相手の目の動きや手の動きに注目です。

絵はアメコミのような線が太いタッチで描かれ、二次元的に表現していますが、なぜか実写なのかと勘違いしてしまうような動きであったり、風景であったり・・・不思議な感覚に襲われます。

今回のきっかけを作った戦友のボアズ・レイン=バスキーラ。
道を印してくれるセラピストで戦友のオーリ・シヴァン。
フラッシュバックに登場する旧友カルミ・クナアン。
違う部隊に所属し、戦場での決死の逃亡を語るロニー・ダヤグ。
パチョリを愛好する闘争心の強い戦友シュムエル・フレンケル。
PTSDの専門家ソロモン博士。
従軍記者だったテレビ特派員ロン・ベン=イシャイ。
「サブラ・シャティーラの虐殺」でパレスチナ難民キャンプを包囲していたイスラエル軍兵士ドロール・ハラジ。

彼らへのインタビューによって、フォルマン監督の記憶は徐々によみがえるのですが・・・。

指導者を暗殺された報復・・・なぜ、こんな酷いことができるのでしょう。実は、この作品ではそれほど「虐殺」について詳しくは語られていません。

しかし、それはラストシーンのためだったのでしょう。

アニメーションから突然、現実へと引き戻された時の衝撃・・・言葉にできません。

インターネットで調べれば調べるほど「サブラ・シャティーラの虐殺」の惨状、ファランヘ党の凶状がわかります。イスラエル軍は止められなかったのでしょうか。本当に何も知らなかったのでしょうか。

イスラエル軍に所属していたフォルマン監督がこの作品を製作したことに大きな意義があると思います。フォルマン監督自身はこの作品で何も結論を出していません。主張もしていません。観る人が考え、自分に何ができるのかを考えて欲しいのかもしれませんね。

多くの人に観てほしい良質のドキュメンタリー作品でした。


★★★★★★★★★


Title:
VALS IM BASHIR

Country:
Israel/France/Germany/USA/Finland/Switzerland/Belgium/Australia (2008)

Cast:
(Himself (voice))ARI FOLMAN
(Ari Folman (voice))SHAHAR SOREK
(Boaz Rein-Buskila)GADI EREL
(Boaz Rein-Buskila (voice))MICKEY LEON
(Himself (voice))ORI SIVAN
(Carmi Cna'an (voice))YEHEZKEL LAZAROV
(Himself (voice))RONNY DAYAG
(Himself (voice))SHMUEL FRENKEL
(Herself (voice))ZAHAVA SOLOMON
(Himself (voice))RON BEN-YISHAI
(Himself (voice))DROR HARAZI

Director:
ARI FOLMAN

Awards:
Golden Globes, USA 2009
(Golden Globe(Best Foreign Language Film))

Los Angeles Film Critics Association Awards 2008
(LAFCA Award(Best Animation))ARI FOLMAN

National Society of Film Critics Awards, USA 2009
(NSFC Award(Best Film))


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Comment

やっぱり高評価ですね~
外国語映画賞で『おくりびと』が受賞でしたけど、こちらが本命でしたもんね。
鑑賞した方の多くは、こちらに軍配の方が多かったです。
最近レンタル屋さんに行くことがなくなってしまったのですけど、これはやっぱり観ておきたいなぁ。

>じゅりさんへ

「おくりびと」は未見なんですよねぇ。
長編アニメーション賞ではなく外国語映画賞にノミネートというところが凄いですね。
是非、機会があればご覧くださいね。
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Author:ひで
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