カンバセーション …盗聴…
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盗聴屋の男の苦悩を描いたサスペンス。
その年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したフランシス・フォード・コッポラ監督の作品です。同じくパルム・ドールを受賞した監督作品「地獄の黙示録」よりも前に製作されています。
「地獄の黙示録」では前半が戦争映画、後半がアドベンチャー&主要キャストの心理・精神世界を描いていましたが、この作品では前半がサスペンス、後半が主人公の心理・精神世界を描いています。
この2段構えのテーマ、特に後半に心理・精神的なテーマを取り上げるのが監督作品の特徴なのでしょうか。
サンフランシスコ。ユニオン広場。多くの人々が行き交う公園に1組のカップルがいました。
そのカップルを尾行する男たち。彼らは民間の盗聴屋でした。
盗聴・監視の業界において、その名を知らない者はいないと言われているハリー・コールが彼らのリーダーでした。相棒のスタンやポールのサポートでそのカップルの会話を記録します。
事務所に戻り、記録したテープの雑音を消し、彼らの会話を鮮明にしていきます。
しかし、ハリーはその腕とは反対に心は既に疲弊しきっていました。
盗聴することに良心の呵責を感じ始めていたのです。
今まで、ターゲットのプライベートなど全く気にすることがなかったハリー。ただ、会話を記録し、依頼人に資料を直接渡す。徹底して守り続けた心の壁が次第に崩れ始めていました。
そして、カップルの会話から彼の心は大きく揺らぎ始めます。
「我々を殺す気だ。」
ここまでの導入部は「第三の男」と同じように、これからの展開を期待してしまうストーリーですね。前半はサスペンスをメインにしているものの、後半への布石も散りばめられています。
ハリーの人物像を前半から細かく描いています。
極端に施錠している玄関のドア。
愛する人であろうと決して部屋にはいれない。
電話をかけるときは公衆電話から。
と徹底した秘密主義。盗聴屋だからこそ、逆に盗聴・監視される危険を知っているのでしょうね。しかし、今回の依頼を機に彼の周りにもさまざまな変化が起き始めます。
下の階に住むミセス・エバンゲリスタ。
愛するエミー。
相棒のスタン。
ライバルのラモン。
ハリーを誘うメレディス。
ターゲットのカップル、マークとアン。
依頼人と依頼人の秘書マーチン。
彼らがハリーの心に揺さぶりをかけます。はたしてハリーは盗聴屋として仕事を全うするのか、それとも・・・。
ハリー役にはジーン・ハックマン。「フレンチ・コネクション」で魅せた攻撃的な男のイメージが強いですが、この作品では攻撃的ではあるもののどこか心に傷を負っている・・・人知れず苦悩する男を熱演しています。1人でサックスを吹くシーンがカッコ良いですね。
依頼人の秘書マーチン役にハリソン・フォードも出演していますが、この作品はジーン・ハックマンの存在感で他のキャストを圧倒しています。
ラスト。
サスペンスでのクライマックスとなるジャック・ター・ホテルでのシーン。あれは現実なのかそれとも幻覚なのか・・・。
しかし、正直、そのシーンはその後のハリーの心理・精神世界のクライマックスでどうでもよくなってしまいます。
左右にカメラがパーンするラストシーン。
虚無。
現実逃避。
ハリーの心が具現化した世界を表現しているかのようでした。
★★★★★★★★☆☆
Title:
THE CONVERSATION
Country:
USA (1974)
Cast:
(Harry Caul)GENE HACKMAN
(Stan)JOHN CAZALE
(William P. 'Bernie' Moran)ALLEN GARFIELD
(Mark)FREDERIC FORREST
(Ann)CINDY WILLIAMS
(Paul)MICHAEL HIGGINS
(Meredith)ELIZABETH MacRAE
(Amy Fredericks)TERI GARR
(Martin Stett)HARRISON FORD
Director:
FRANCIS FORD COPPOLA
Awards:
Cannes Film Festival 1974
(Golden Palm)FRANCIS FORD COPPOLA
(Prize of the Ecumenical Jury - Special Mention)FRANCIS FORD COPPOLA
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