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過去のない男

Category : 徒然映画

過去のない男


監督:アキ・カウリスマキ

キャスト:

ユハニ・ニユミラ、カイヤ・パリカネン、サカリ・クオスマネン、アンニッキ・タハティ

マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ、エスコ・ニッカリ、エリナ・サロ

製作:2002年、フィンランド/ドイツ/フランス


フィンランド、ヘルシンキ。とある駅で降りた1人の男。当てもなさそうな男はベンチで寝てしまう。そこに現れた3人組の暴漢に襲われ、瀕死の重傷を負わされた。


翌朝、血だらけのまま駅へと戻った男だが、公衆便所で再び倒れてしまった。すぐに、病院へと運ばれた男だったが間もなく死亡・・・。


・・・突然起き上がる男。そして、病院を抜け出し、とある川岸で倒れてしまうも近くのコンテナに住む家族に助けられる。しかし、男には過去の記憶が一切なくなっていた。


Comment:

記憶をなくした「過去のない男」の新しい生活と人とのふれあいを描いた作品。


何でしょうこの世界観は。今までにない新しい映画を観たような感覚に襲われました。


川岸で倒れていた男。実はその場所は私有地でコンテナに住む家族も私有地を警備するアンティラに家賃を払いながら生活をしていました。この家族は生活にゆとりがないものの家族の幸せや助けあう心を持つ素敵な家族でしたね。


妻カイザの手厚い看護のおかげで男は食事を摂れるまでになりますが、記憶がなくなっていることに気付きます。夫ニーミネンとカイザは病院に送らずもう少し様子を見てから考えようと相談します。


ニーミネンは行く宛てもわからないので、ここで住もうと決意します。ニーミネンの計らいでアンティラから別のコンテナを借り新しい生活を始めます。


この私有地には他にもたくさんのホームレスの人々が住んでいました。そこで、キリスト教派の団体「救世軍」が彼らを援助していました。ニーミネンに連れられた男はそこで救世軍の女性イルマと出会います。


そして男とイルマはお互いに気になり始めるのですが・・・。


作品全体は淡々と進んでいきます。登場する人物も感情をひけらかすようなこともなく、一言三言を語るだけです。だからこそ、時折みせる笑顔やラストの手を繋ぐシーンが強く印象を残します。またあの手の繋ぎ方、微妙な距離も今の2人の心境を物語っているようでした。


これから素晴らしい人生が始まる予感を感じさせます。


淡々とストーリーが進む中にも面白いシーンが度々登場します。まずは、「救世軍」の女性マネージャーとバンドマンたち。ホームレスの人たちに音楽を提供する彼らでしたが、キリスト教派であるため、選曲は癒しの曲ばかりでした。しかし男の進言によって彼らは変わりはめます。特に女性マネージャーの変わりようは思わず吹き出してしまいました。あの皺が素敵です。歌も素晴らしかったですね。


この作品は随所に音楽が散りばめられ、異国情緒の雰囲気を味わえます。しかも中にも日本の曲も。終盤のシーンで男が電車内でお寿司を食べるシーンがあります。なぜにお寿司?と思ってしまうのですが、そこで日本語で歌われる歌謡曲?が流れてきます。


小野瀬雅生が歌う「MOTTO WASABI」という曲だそうです。すごいタイトルですね・・・(^_^;

あとクレイジーケンバンドの曲も使われているそうです。


男の過去は唐突に判明しますが、その過去は散々なものでした。その過去を知らされても男は何も思い出せません。いや、もしかしたら思い出したのかも。その辺りについては何も語られていません。


しかし、男はコンテナに住む家族とふれあい、自分も新たな生活はじめ、そして、愛するイルマとも出会うことができました。彼にとっては過去の生活より、ヘルシンキで過ごしたコンテナでの生活のほうが、今そしてこれからの姿を想像することができたのでしょうね。


男にとっては突然に訪れた過去との決別でしたが、過去を振り返らず、今の自分を信じて生きる。何の変哲もないごく平凡な生活の中でも、ポジティブに生きることで幸せになれることを伝えています。しかし、決して強く訴えるようにではなく、さりげなく伝えている、やさしく語りかけているような作品でした。


フィンランドの監督アキ・カウリスマキに注目です。


あと、第2回パルムドッグ賞を受賞したハンニバル役のタハティ(雑種)。名前負けしている彼?彼女?の名演にも注目ですね。



第55回カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ、女優賞(カティ・オウティネン)



★★★★★★★★☆☆



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